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老化による消化吸収機能の減退など諸組織機能の低下がもたらす栄養素の体内利用効率の低下がかかわっていると思われるが、おそらく先述の加齢にともなう摂食量の減少によってもたらされる諸栄養素摂取量の減少とも深く関係しているものと思われる。このことは高齢者の健康保持増進の視点からは近年とくに重要視されるようになってきており、成人一般に対する成人病予防を中心的な目的とした。一部栄養素の過剰な摂取を避けることを主旨とする食生活対策(表1)に対し、高齢者、中でも最初に述べた後期高齢期にある人に対する食生活施策の中心におかれているのは、このような低栄養対策である。1992年に厚生省によって新たに発表された高齢者の食生活指針を表2に示したが、これをみると日本の健康増進を志向した保健施策の中に、そのような主旨が盛り込まれていることを具体的に窺うことができる。

おわりに

高齢化時代を迎えて、わが国を含む先進工業化諸国では成人病対策とともに高齢者の健康対策が不可避の課題となっている。栄養問題から見ても、高齢者そのものに対する施策のみでなく、健康で活動的な高齢期を迎えるための、高齢期以前の食生活対策の重要性が注目されるようになった。したがって今後今回述べたような中高年期を包括した総合的な視点がますます重要となってくることが予測されている。

 

 

 

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